東大ら,治験の段階にある抗がん剤が統合失調症モデル動物にも効果があることを発見

東京大学,米国ジョンズホプキンス大学,米国ベンチャー企業Afraxis, Incらの研究グループは,マウスにおいて統合失調症の発症関連遺伝子の機能を抑制すると,思春期に相当する時期にシナプスが過剰に除去されることを見出した。また,このマウスに新規抗がん剤候補薬を投与すると,過剰なシナプスの除去と感覚運動情報制御機能の障害が予防されることを突き止めた。

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統合失調症はその発症に遺伝因子が関与し,そして前頭野における神経細胞の接合部位(シナプス)が減少していることが報告されているものの,遺伝子の機能不全がどのように思春期の神経回路網形成に影響をあたえ,統合失調症への発症につながるのかは解明されていない。

これまでの統合失調症の創薬はドーパミン遮断薬を中心とした開発が進められてきたが,その効果は限定的だった。PAK 阻害剤は各種がんに対する治験がすでに進行しており,正常の細胞機能に対する影響が少ない安全性の高い薬剤であることが示されつつある。

研究グループは,マウスにおいて統合失調症の発症関連分子として確立されている遺伝子DISC1が機能不全に陥ると,思春期にシナプスが過剰に除去され,成体時にはシナプス密度が大きく減少することを見出した。PAK 阻害剤であるFRAX486は,この過剰なシナプスの除去を予防し,統合失調症に関連する症状の一つである感覚運動情報制御機能の障害も改善させた。

この研究は,「シナプスを保護する」という従来の統合失調症の治療戦略にない新たな観点により,特に早期介入による治療効果,ならびに既存の創薬の相乗効果の可能性を示唆し,今後の統合失調症の治療戦略に応用されることが期待される。

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