日本電信電話(NTT)と国立情報学研究所(NII),大阪大学は,超伝導磁束量子ビットとダイヤモンド量子メモリを組み合わせたハイブリッド系において,長い寿命を持つ隠れた量子状態(ダーク状態)が発現するメカニズムを世界で初めて明らかにした。
ダーク状態とは量子力学的干渉性のためにその系から発する信号が打ち消されてしまい,実験的に検出のできない「隠れた状態」を意味する。このようなダーク状態は一般に長寿命であることが知られているものの,実験的に検出ができないため,量子情報への活用は難しいと考えられている。
研究チームは,超伝導磁束量子ビット・ダイヤモンド量子メモリのハイブリッド系においては,結晶の歪みや磁場ノイズのために干渉が完全には働かず,ダーク状態由来の信号が検出可能であることを理論的に示した。
そして実際にその信号を実験的に捕捉し,量子状態の寿命が従来のハイブリッド系の量子メモリでは20nsだったものが,ダーク状態では150nsまで長くなることを示した。ダーク状態が利用できるようになれば,量子メモリの長寿命化が期待できる,
そのため,制御性の良い量子プロセッサの超伝導磁束量子ビットとあわせて用いることで,量子コンピュータの大規模化に必要なリソースを大幅に削減できるようになる。その結果,量子コンピュータを用いて,現在用いられているコンピュータと桁違いの速さで計算が実行できるようになる展望が開けてくる。
この結果は,保持時間の長い量子メモリを構成する新しいアプローチとして応用できるため,大規模量子コンピュータに必要となるリソースの大幅な削減と,それに伴う開発コストの低減とにつながることが期待される。そのため,高速の量子情報処理の実現に向けたブレークスルーとなる可能性が期待される。
詳しくはNII ニュースリリースへ。