産総研ら,封止剤などの検査も可能なX線非破壊検査法を開発

産業技術総合研究所(産総研)生産計測技術研究センタープロセス計測チーム主任研究員の上原雅人氏と東北大学は,X線タルボ干渉法を用いた新たなX線非破壊検査法を開発した。

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X線は非破壊検査に広く用いられているが,これまでの検査法で得られるX線吸収像では,電子部品内部の金属配線や電極を検査できても封止材などの検査は困難だった。これらの検査には一般に超音波が用いられるが,試料を水に浸す必要があり全数検査には難がある。

一方,これまでのX線非破壊検査法である吸収像と比べて,X線による位相像では樹脂などでも十分なコントラストが得られるが,多くの場合,大型の放射光光源を必要とするため,生産現場で撮影できなかった。

しかし,X線タルボ干渉法を用いれば,実験室用のX線源でも吸収像と位相像,散乱像の3つを同時に取得できる。この方法は2枚のX線格子を用いて,タルボ効果という回折現象を利用して撮影する。この技術は,東北大学が医療用としての研究・開発が先行しているが,今回研究グループは,工業用非破壊検査法としての応用の可能性を探った。

素子,金属配線,電極のほか,それらを外部から保護する封止材で構成されているICパッケージを撮影した結果,吸収像では金属細線や電極を観察できたが,封止材の内部構造は見えなかった。一方,位相微分像では封止材内部に多数のボイド(気泡)を確認できた。

パワーモジュールを撮影したところ,吸収像ではセラミックスのクラックは全く見えないが,散乱像では確認できた。また,試料には素子の代用としてシリコン板を入れてあるが,封止材とほぼ同じX線吸収係数をもつので吸収像では全く見えない。しかし,封止材とシリコン板の内部組織が異なるので散乱像では認識することができた。

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X線タルボ干渉法では,これまでは認識できなかった欠陥や部材を見ることができた。小型のX線源でも撮影できるので,生産現場での非破壊検査の高度化が期待できる。研究グループでは今後,さらに厚みのある製品でも検査ができるよう,X線のさらなる高エネルギー化と空間分解能の向上を目指すとしている。

詳しくは産総研 研究成果へ