東大,肉類ペプチドに脳萎縮抑制効果・神経心理機能強化の可能性を発見

東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授の久恒辰博氏らの研究グループは,国立精神・神経医療研究センターと共同で,鶏肉に含まれるイミダゾールジペプチド含有食品を3ヶ月間摂取するボランティアによる実験を行なったところ,イミダゾールジペプチドに記憶に関連するヒトの脳部位の萎縮を抑制するとともに,神経心理機能を改善するはたらきがあることがあることを示唆する結果を得た。

イミダゾールジペプチドを構成するカルノシン(βアラニル-ヒスチジン)の化学構造式

ボランティア群と,そうでないボランティア群の食品摂取期間の前と後に,MRI検査と神経心理機能検査を実施したところ,前者の群ではイミダゾールジペプチド含有食品を摂取後に記憶に関連する脳部位の萎縮が抑制されていることおよび,うつ傾向と認知機能に改善傾向が認められた。

食べ物には、生体のエネルギー源としてだけではなく,生体の恒常性を保ち,心身の健康を維持するはたらきがある。中でも肉類には,単なる蛋白質の供給源であることを超えて,例えば「肉を食べていると元気になる」といった,未だ知られざるはたらきがあることも,近年論じられてきており,これらの効果をもたらす食品中の成分を高機能食品成分と呼ぶ。

例えば,鶏肉には高機能食品成分としてイミダゾールジペプチドと呼ばれる複数のアミノ酸からなる分子(ペプチド)が多く含まれており,イミダゾールジペプチドにはこれまでに抗疲労効果があることなどが報告されてきた。しかし,イミダゾールジペプチドには未知の効果がある可能性が残っていた。

この成果から,毎日の食事の中で,食肉や魚肉を適量摂取することは,体にとって必要なイミダゾールジペプチドを適切に補うことにつながり,結果として脳や心の健康維持に貢献する可能性が期待される。

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