東北大ら,免疫病の発症を抑制する細胞内タンパク質を発見

東北大学大学の研究グループは,米国ラホヤ研究所との共同研究により,免疫病を引き起こす炎症性リンパ球の活動を TRAF5 という細胞内タンパク質が防止することを発見した。

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アレルギーや自己免疫疾患が発症する過程において,ヘルパーT 細胞と呼ばれるリンパ球が活性化され,これらの病気の引き金が引かれる。今回の発見によって,多発性硬化症や関節リウマチなどの様々な自己免疫疾患や炎症性疾患を改善する新たな薬剤や,新しい治療法の開発が期待される。

抗原とまだ接触したことのないナイーブ(CD4+)T細胞は,抗原受容体シグナル(シグナル 1),補助刺激受容体シグナル(シグナル 2),サイトカイン(IL-6)受容体シグナル(シグナル 3)によりヘルパーT 細胞へ分化する。

STAT3を介した IL-6 受容体シグナル伝達は,病原性ヘルパーT 細胞(Th17 細胞)の分化に重要な役割を果たす。TRAF5 は,IL-6 受容体の細胞内領域に結合することで STAT3 の活性化を阻害し,その結果、Th17 細胞の分化を抑制する。この結果,Th17 細胞によって誘導される自己免疫性疾患に対し抑制的に働くことが明らかになった。

TRAF5 は,従来 TNF 受容体スーパーファミリー分子群が関与するシグナル伝達において,NF-κB などの炎症性シグナルを促進する機能をもつことが示唆されていた。この研究から,TRAF5 がサイトカイン受容体である gp130 に結合することにより,IL-6 シグナルを抑制するという予想外のシグナル伝達機構が初めて明らかになった。

この研究成果は,炎症性CD4+T細胞群によって惹起される様々な炎症性疾患の治療法の開発につながるものと考えられる。これに加えて,TRAF 分子群を介したさらなる炎症性シグナル制御機構の存在が示唆され,今後の研究の進展が期待される。

詳しくは東北大学プレスリリースへ。