理研,植物を構成する成分を用いてバイオプラスチックの合成に成功

理化学研究所の研究グループは,植物を構成する成分であるリグニンの分解物を微生物に与えることで,バイオプラスチックの一種であるポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を合成することに成功した。

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これまで,植物バイオマスのなかでも,セルロースなどは分解による糖への変換が幅広く進められてきたが,樹木に多く含まれるリグニンは分解性が低く,また分解後に得られるいくつかの分解物が微生物などへ毒性を示すなどの理由で,利用が困難であると考えられてきた。

研究グループは,リグニンを構成する芳香族化合物および類似する芳香族化合物を単一炭素源として,複数種の微生物に与えることで,PHAの合成を試みた。その結果,PHAの生産株として有名な真正細菌の一種「ラルストニア・ユートロファH16(Ralstonia eutropha H16)(Cupriavidus necator)が,リグニンの構成成分である4-ヒドロキシ安息香酸(4-HBA)をはじめ複数の芳香族化合物から,PHAを合成することを確認した。

4-HBAを用いた場合,微生物の乾燥菌体重量の63wt%(質量パーセント濃度)程度までPHAを微生物内に蓄積でき,生産性が高いことも分かった。精製後に得られたPHAは,糖や植物油を原料として合成したPHAに比べ,分子量がやや低いものの,フィルムなどのプラスチック製品として利用可能な物性を示した。

今回の成果から,これまで利用が困難であったリグニンを用いた,微生物による物質生産を目指した基盤技術の構築が期待される。また,リグニン分解物を含む製紙工場などの廃液利用へも応用が可能であり,幅広いバイオリファイナリー技術と融合することにより,新たなバイオマス産業の構築が期待できる。

詳しくは理研プレスリリースへ。