長崎大学,カナダ・キャンベルファミリー癌研究所,トロント大学,マギル大学,オンタリオ癌研究所は共同で,ほ乳類の細胞の大きさを調節する遺伝子を発見した。
細胞は,機能的に分化した状態では概ねある一定の大きさを保っている。しかし,刺激が加えられたり活発な増殖を開始したりするときなどには一時的に大きくなり,その必要がなくなるとまた元の大きさに戻ることが知られている。
また,癌化した細胞は元の細胞に比べて大きくなっていたり,多能性を秘めた幹細胞は他の細胞に比べて著しく大きさが異なったりする場合があることなどから,細胞の大きさを調節する機構は近年注目を集めているが,その実態についてはほとんど分かっていなかった。
共同研究グループは,細胞サイズの調節に関わると考えられる遺伝子を網羅的に調べるための新しい方法を開発し,いくつかの候補遺伝子を同定した。その一つを細胞に過剰発現させると実際に細胞が大きくなり,反対にその遺伝子の活性を抑制すると細胞が小さくなり,一部で細胞死が誘導されることが分かった。
その原因を調べたところ,この遺伝子がコードするタンパク質が細胞内で増えると,細胞内のミトコンドリアが増加し,そこで産生される ATP という化合物の合成が活発化されることが判明した。その結果,細胞内のタンパク質合成が総体的に促進され細胞が大きくなるという機構が考えられた。
この遺伝子の過剰発現による細胞サイズの増加は,マウスの体内でも確認することができた。以上の結果を踏まえ共同研究グループは,英語で「大きい」ことを表す形容詞large をもとに,この遺伝子がコードしているタンパク質を Largen(ラージン)と呼ぶことを提案した。
Largen は細胞の代謝調節に関わると考えられることから,今後、Largen の機能が詳細に判明すれば,癌やメタボロミックシンドロームといった複合的な疾患に対する理解を深めるとともに,創薬にもつながるものと期待できる。
詳しくは長崎大プレスリリースへ。