九州大学最先端有機光エレクトロニクス研究センター(OPERA) /カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)教授の安達千波矢氏らの研究グループは,次世代の高精細ディスプレイや大面積照明への展開として大きな期待が寄せられている熱活性化遅延蛍光材料を利用した高効率かつ小さなロールオフ特性を示す青色発光有機EL素子の開発に成功した。
有機EL素子に用いられている青色発光材料は,従来,蛍光材料(第一世代)とリン光材料(第二世代)が用いられてきた。その中で,OPERAが研究を進めている熱活性化遅延蛍光材料は,一重項と三重項励起状態のエネルギーギャップが小さいという特徴を有し,電気励起によって生成した励起子をほぼ100%の効率で光へと変換できることから,第三世代有機EL発光材料として注目されている。
この研究成果は,熱活性化遅延蛍光の発光メカニズムを利用することにより,高効率な青色EL発光が実現可能であることを実証したもの。また,量子化学計算により,励起状態のエネルギー準位と小さなロールオフ特性との間に重要な相関関係があることを明らかにした。
具体的には,青色の熱活性化遅延蛍光を発する電荷移動型分子であるDMAC-DPSを用いて有機EL素子の評価を行なった結果,最大外部量子効率が19.5%に達する高効率EL発光を示し,高電流密度領域においてもロールオフが小さいことを明らかにした。
この研究成果により,フルカラー有機ELディスプレイや白色有機EL照明などの普及に関して,有機EL発光材料に求められている低材料コストかつ高効率発光の実現というこれまでの発光材料では解決できなかった課題の解消が期待される。
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