生理研、音楽を用いた新しい突発性難聴の治療法を開発

自然科学研究機構生理学研究所特任准教授の岡本秀彦氏、教授の柿木隆介氏と他の研究グループは共同で、突発性難聴を発症した患者に、聞こえが悪くなった耳を積極的に活用してもらうリハビリテーション療法で、聴力がより回復することを明らかにした。

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突発性難聴になると片耳が聞こえにくくなるため、正常な耳ばかりを使い難聴の耳は使わなくなってしまい、難聴の耳から入力を受けている脳の部位も活動を低下させてしまい、脳は使われないとその機能がどんどん衰える。

この研究では突発性難聴患者の正常な耳を耳栓で塞ぎ聞こえにくくしたうえで、難聴になった耳には音楽をたくさん聞かせることで、難聴の耳とそれに対応する脳部位の神経活動の活性化を試みた(病側耳集中音響療法)。その結果、通常のステロイド療法に加え病側耳集中音響療法を行なった22名の突発性難聴患者の聴力は、ステロイド単独療法の31名の患者に比べて良く回復した。

また生体磁気計測装置MEG(magnetoencephalography)を使い、病側耳集中音響療法を受けたうち6名の脳の反応を記録した。片方の耳に音を聞かせると通常反対側の脳活動の方が大きいが、入院時はこのような脳活動の左右差がなかった。しかしながら、病側耳集中音響療法を行った後では健常人と同様の脳活動の左右差が認められた。病側耳集中音響療法により、難聴の耳に対応する脳部位が再活性化したのではないか、と考えられる。

突発性難聴が起こると病側の耳が聞こえにくくなる為、使われなくなってしまう。ヒトの体の機能は使用されないと衰えてしまうため、この研究では聞こえにくい耳を保護するのではなく、むしろ積極的に使用し耳や脳の神経活動を活性化させることで聞こえを回復させた。安価で安全な突発性難聴治療方法として注目される。

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