日立,KEK,北里研,誤差5%以内で金属の実効原子番号を測定するX線イメージング法を開発

日立製作所,高エネルギー加速器研究機構(KEK)および北里研究所は共同で,金属膜を透過するX線(放射光)の吸収量とともに位相の変化をX線干渉計によって測定し,金属の実効原子番号を観察するX線イメージング法を開発した。

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金属を透過する数十キロエレクトロンボルト(keV)の大きなエネルギー領域で高い精度の実効原子番号を観察するためには,高感度に位相の変化を検出することが必要。今回,日立が独自に開発を進めているX線干渉法(単結晶から製作されたマッハツェンダー型のX線干渉計を用いて,位相の変化を波の重ね合わせにより直接的に検出する方式)を採用することで他の位相検出法に比べて10倍程度の検出感度を実現した。

さらにこの方式では,光学素子や検出器の位置を変更し再調整する必要がなく,X線干渉計内での参照波の光路を遮蔽板で開閉するのみで吸収と位相の両像を取得可能であるため観察時間の短縮化が図られる。

軽元素から金属までの元素を対象とした測定が可能なエネルギー17.8 keV(波長0.7オングストローム)の放射光を用いて,アルミ,銅,鉄,亜鉛の単一元素からなる箔の吸収ならびに位相コントラスト像を測定。この結果から実効原子番号を算出したところ,各金属について誤差5%以内で原子番号に一致した値を得ることができた。

開発した技術で錆びた鉄を測定したところ,酸化により錆が進行している部分では実効原子番号が小さくなっていることを検証した。これは,酸化により元素番号の小さい酸素(元素番号8)の割合が,鉄(元素番号26)に比べて増加したことによるものであり,この検証によりこのイメージング法では,酸化など元素組成の変化も簡便に可視化できることが確認できた。

開発した技術は,大きなエネルギー領域での放射光の特長を利用し,大気中で数十ミリメートルの広い範囲を測定できること,また数十ミクロンの空間分解能で,被写体となる材料の実効原子番号を特定できることから,新たな磁石新素材やインフラ構造部材の観察技術として期待される。

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