東京農工大学大学院工学研究院先端電気電子部門准教授の西舘泉氏と防衛医科大学校防衛医学研究センター情報システム研究部門および防衛医学講座の共同研究グループは、爆風が脳に引き起こす重要な現象をレーザにより再現、解析することに成功した。
光を吸収する物質に高強度のパルスレーザを照射することにより衝撃波(レーザ誘起衝撃波)を安全に発生させ、ラット頭部に作用させることにより爆風が脳に引き起こす重要な現象を再現し、詳細な解析を行なった。
その結果、レーザ誘起衝撃波を作用させた部位を起点として神経が過剰な興奮状態になるとともに脳活動が抑制され、その状態が波となって毎分数ミリメートルの速度で脳内に拡がることがわかった。またその波の拡がりに伴って脳が酸欠(低酸素血症)になり、その状態が1時間から数時間にわたって続くことがわかった。
この現象は脳に出血や組織損傷(挫傷)を生じなくとも、衝撃波の刺激のみで発生した。このような長時間の酸欠状態は神経細胞に異常を来たし脳機能障害を引き起こしうることから、これらをコントロールすることが治療の重要なポイントになると考えられる。
爆発は戦闘地域やテロのみならず、工場での事故、さらに昨年ロシアで発生した隕石の爆発や火山の爆発などの自然現象でも発生する。今回の研究成果は、広くこれら爆発が生体に及ぼす傷害の予防や治療の研究に貢献するものと期待される。
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