北大と筑波大、ナノの世界の電子のさざ波を見ることに成功

北海道大学電子科学研究所教授の三澤弘明氏の研究グループ,および筑波大学数理物質系講師の久保敦氏らは,わずか~10-14秒(~10フェムト秒)の短い時間内しか発生しない,ナノの世界にできる電子のさざ波の動きを観測することに成功した。

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髪の毛の太さの1000分の1程度の極めて小さいサイズの金の微粒子は、光と相互作用することにより局在表面プラズモン共鳴という金表面の電子波と光が結合した状態を形成し,赤色を呈することが知られている。この局在表面プラズモン共鳴による発色は,数百年経過しても色褪せることがないこから,古くは中世ヨーロッパの建築物のステンドグラスや日本でも江戸切子や薩摩切子などの伝統工芸品に利用されてきた。

しかし,それぞれの金ナノ微粒子に誘起される共鳴状態の寿命は短く(共鳴の寿命は短いが何度でも共鳴状態を形成できるため永遠の色を示す),1つの金ナノ微粒子に誘起される電子のさざ波の減衰過程を観測することは,測定対象物も小さく難しいと考えられてきた。

今回、わずか7×10-15秒の間だけ光るレーザ光線を金ナノ粒子に照射し,微粒子から放出される光電子を高分解能に画像化できる顕微鏡を用いて共鳴状態を可視化するとともに,レーザ光線を2つの光線に分割し,2つ目の光線を時間遅延させることにより,コマ写真の要領で電子のさざ波の動きを観測することに成功した。

最近,金ナノ微粒子は半導体基板と組み合わせることにより,可視光や赤外光を高効率にエネルギーに変換する太陽電池や人工光合成系の光アンテナとして注目されつつあり,本観測はこれらの原理の解明や構造設計の最適化を導出する方法論として期待される。

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