高知工業高等専門学校,東京大学地震研究所,宇宙航空研究開発機構,情報通信研究機構及び日立造船は,高知県室戸沖に設置しているGPS津波計(高知県の黒潮牧場16号ブイ)で津波や波浪を観測するために必要なデータを,準天頂衛星初号機「みちびき」を用いて送り,観測結果を技術試験衛星Ⅷ型「きく8号」を用いて陸上に伝送する実験を開始した。
この実験は,平成24年度に実施した基礎実験(技術試験衛星Ⅷ型「きく8号」を用いたGPS津波計からのデータ伝送実験)の成果に基づいて,より完成度の高いシステムとして実証することを目的とするもの。最終的には,将来の「防災等に資する情報通信衛星」の全体像を明確にすることを目指している。
この実験を通して,東日本大震災で提起された以下の課題に対して,衛星によるデータ伝送が有効であることを実証する。
(1)GPS津波計のさらなる沖合展開
GPS精密測位による津波・波浪・潮汐の観測には,鉛直方向についてcmオーダーの分解能,精度及び速報性が必要であり,津波観測には100kmを超す沖合のデータが望まれる。従来は,陸上の基準局からの距離が20km程度に限定される課題があったが,今回方式では衛星のサービスエリア内であれば距離の制約がなくなる。
(2)被災地域の通信網の寸断に対する対策
従来は陸上の通信網に依存していたため大規模な停電で使用できなくなったが,今回方式では衛星を使用するので被災地から離れたところにデータを伝送することで,停電の影響を受けなくなる。
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