阪大、極低温を用いずNMR信号強度を飛躍的に増大させる手法を開発

大阪大学基礎工学研究科システム創成専攻電子光科学領域教授の北川勝浩氏の研究グループは、さまざまな物質が添加可能な「ガラス相」に添加された有機化合物のNMR(核磁気共鳴)信号を、従来法の理論限界を大幅に超えて増大することに世界で初めて成功した。

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研究グループは、 光とマイクロ波を照射することによって温度に依存せずに核スピン(原子核のもつ磁石)の向きを揃えることができる「光励起三重項状態の電子スピンを用いた動的核偏極法」によって、ガラス相に添加された有機化合物のNMR分光信号の強度を飛躍的に向上させることに成功した。

ペンタセンなどの有機化合物では、光を照射したときにできる励起三重項状態において電子スピンの向きが揃うという性質がある。このような物質をサンプルに少量添加して光照射後に動的核偏極をおこなえば、温度に依存せずに核スピンの向きを揃えることができる。今回世界で初めて、さまざまな物質を溶かし込むことができるガラス相で水素核スピンの向きを揃えることに成功した。そして、-150℃において、光を使わない場合の理論限界である660倍を超える4300倍の信号強度増大を達成した。

この研究成果によって、従来の信号強度増大法で用いられていた極低温環境が必要なくなり、今後は低コストでNMR分光法やMRI(磁気共鳴イメージング)の高感度化がすすむのみならず、これまで不可能であった低温で劣化する材料や生体物質の極微量分析への応用など化学・医療分野への貢献が期待される。

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