理化学研究所は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で開発し、国際宇宙ステーション(ISS)に搭載した全天X線監視装置「MAXI(マキシ)」を用いて、新星爆発の瞬間に重量級の白色矮星を包みこんだ「火の玉」を初めて観測することに成功した。
重い白色矮星の表面上で新星爆発が起こると、点火から数時間の間に星全体が「火の玉」に包まれ、紫外線や軟X線の閃光が放出されるという理論予想があったが、短時間の突発的なX線閃光を検出する装置がなかったため、閃光は観測されたことがなかった。2009年8月に運用を開始したMAXIにより、軟X線の波長域で全天の突発現象を監視することが初めて可能になった。
MAXI研究グループは、地球から22万光年遠方に位置する小マゼラン星雲の東端に、通常の新星爆発時に比べ約100倍という極めて明るい軟X線の閃光を放射する突発天体を発見し、「MAXI J0158-744」と名付けた。MAXIとSwift衛星による追跡観測によって得られたデータを精査した結果、MAXIが観測した軟X線閃光は、非常に重い白色矮星の表面上で起こった新星爆発の点火後約1時間の間に、星全体を包み込んだ「火の玉」からの放射であることが分かった。新星爆発初期の「火の玉」からの軟X線閃光を観測したのは史上初となる。さらに、MAXI に搭載している軟X線分光観測装置(SSC)は、この「火の玉」からの軟X線閃光の中に明るいネオン輝線を検出した。これは、爆発するガス中に大量のネオン元素が存在することを意味し、この白色矮星が酸素とネオンで構成された重い白色矮星であることを示す。
今回、新星爆発初期の軟X線閃光が通常の新星爆発の約100倍の明るさに達したこと、さらに明るいネオン輝線を含んでいることは、既存の新星爆発理論では説明できないため、理論の書き変えが必要になる。また、MAXI J0158-744の質量は、白色矮星の最大質量であるチャンドラセカール限界ぎりぎりの値、もしくは、その値を超えている可能性がある。これは、天文学に広く影響を与える可能性がある。さらに、このような非常に重い白色矮星が珍しいタイプの連星系の中に見つかったことで、連星進化モデルの再考も必要になると考えられる。
詳しくはこちら。