京大、光合成も咲くこともやめた新種の植物を発見

京都大学人間・環境学研究科研究員(日本学術振興会特別研究員)の末次健司氏は、日本に生育する菌従属栄養植物の分布の整理に取り組んでおり、その一環として、 鹿児島県鹿児島郡三島村竹島において調査を行なったところ、2012年4月に未知の菌従属栄養性のラン科植物を発見した。

131114kyoto1

本種の大きな特徴として閉鎖花しかつけないことが挙げられる。本種の属するラン科は、昆虫などの送粉者との関係により多様化したグループで、その多くが特定の送粉者を呼び寄せるために、独特な花形態を進化させている。しかしながらタケシマヤツシロランは、すべての花が閉鎖花という非常に変わった特徴を持っている。

一般的に、閉鎖花には、送粉者のいない環境下や資源が乏しい環境下で、確実に子孫を残すための保障として存在するものであり、閉鎖花しかつけない植物はきわめて珍しいといえる。

本種は、一般的な植物のイメージから想像される「光合成を行なう」、「花を咲かせる」という重要な形質を両方失っている点で、いわば「植物であることをやめた植物」ともいえる。極めて特殊な生態を持つ本種がどのような適応を遂げ、進化してきたかを解明することは重要な課題である。今後、栄養を得ている菌類の特定や、閉鎖花しかつけない要因などの生態学的な課題の研究に取り組む予定。

この植物は、ラン科のオニノヤガラ属に属する植物で、既知種のなかではハルザキヤツシロランの近縁だが、花の内部構造などから、新種として記載され、Gastrodia takeshimensis (和名:タケシマヤツシロラン) と命名された。

詳しくはこちら