三菱重工業が,海洋研究開発機構(JAMSTEC)と共同で開発した新発想の小型閉鎖式燃料電池システムが,実海域で海中の観測機器へ電力を供給する試験に世界で初めて成功した。ガス循環系に新たな構造を採用するなどして,これまでの技術的課題をクリアした。
今回,実海域試験に成功したのは固体高分子形の高効率マルチ・レス(High Efficiency Multi Less:HEML)燃料電池システム。試験は,燃料電池システムを水深180mまで潜行させ,2つの観測機器に同時に電力を供給した。その結果,安定的な電力供給とそれを受けた機器の継続的な観測が確認された。
この高効率マルチ・レス燃料電池システムは,これまで実用化を妨げてきた問題を,ガス循環系などに新規機構を採用することにより解消したのが特徴。具体的には,燃料電池スタックの上流側と下流側をバルブ操作により一定間隔で入れ替える機構を採用することで,大型化の要因となっていた循環器や加湿器を不要とし(Blower-Less、Humidifier-Less),また,燃料電池スタックを密封することで,水素ガスのリークもなくして(Leak-Less),これらの問題を同時に解決するマルチ・レス(Multi -Less)を実現した。小型化により,自己消費電力の抑制や起動時間の短縮も可能にした。
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