東大、ナトリウムポンプ蛋白質がナトリウムを選択的に運搬する機構を解明

東京大学分子細胞生物学研究所付属高難度蛋白質立体構造解析センタ教授の豊島 近氏の研究グループは、デンマーク・オルフス大学と共同で、ナトリウムポンプ蛋白質がナトリウムイオンを結合した状態の構造を、大型放射光施設SPring-8を用いたX線結晶解析によって高分解能(2.8 オングストローム)で決定することに世界で初めて成功した。

ナトリウムポンプはATPの化学エネルギーを利用し、ATP1個あたり3個のナトリウムイオンを細胞内から細胞外へ汲み出し、同時に細胞内へ2個のカリウムイオンを汲み入れる(対向輸送する)大型の膜蛋白質である。カリウムイオンがなくても働くので、本質的にナトリウムのポンプである。

カリウムイオンを結合した状態のナトリウムポンプの構造の決定には2009年に成功していたが、ナトリウムイオンを結合した状態の構造は未決定であった。今回の成果によって、どのようにしてカリウムではなくナトリウムを選択的に結合し運搬できるのか、そのためにどのような特異的構造が備わっているのか等が明らかになった。

また、圧倒的に構造解析が進んでいるカルシウムポンプ蛋白質と比較することによって、二つのポンプ蛋白質はよく似たアミノ酸配列を持ち、また、カルシウムイオンとナトリウムイオンはほぼ同じ大きさ(半径0.99 Åと0.95Å)を持つにもかかわらず、「ナトリウムポンプは何故ナトリウムを非常に効率よく選択できるのか」も明らかになった。

今回の成果は直ちに病気の治療に結びつくものではないが、このポンプ蛋白質を制御する薬剤の開発に対し重要な基盤を与えるものである。

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