理化学研究所博士研究員の藤原崇之氏らの共同研究グループは,生物の基本となる細胞の染色体の分配の基本機構を解明した。
従来、染色体の複製や分配の機構の研究には、高等動物や真菌類、細菌が用いられてきた。細胞核内に存在し遺伝子DNAを担う染色体は、分裂中期になると棒状の染色体の形に凝縮し、やがてXの形となり、微小管により娘細胞に均等に分配される。ヒトでは分裂中期には46本が観察されている。
研究員は、これまでヒトやカエルを用いた実験系により、この染色体の凝縮と分配にはコンデンシンタンパク質が必須であること、またコンデンシンにはIとIIがあることを発見していた。しかし、それらの機能的な差異とその進化的側面は必ずしも明らかではなかった。
始原的な紅藻のシゾン (Cyanidioschyzon merolae)は20本の染色体をもっているが、分裂中期には個々の染色体が凝縮されない。そこで研究員らはこのシゾンを用いることによりコンデンシンの本質的な機能と原理の解明が可能であると考え、研究を進めてきた。
その結果、シゾンは高等動植物と同じようにコンデンシンIとIIを持つ最も単純な真核生物であり、コンデンシンIIは微小管の構築が阻害されたときに、染色体の動原体の分離・分配に重要な役割をもつことが明らかとなった。この発見は真核生物における染色体構造の進化とコンデンシンの関連を考える上で重要であり、さらに今後医療などへの応用が期待される。
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