人類はこれまでに様々な動物種を選択により家畜化してきた。その家畜化の過程で野生原種から変化する行動が愛玩化と呼ばれる行動形質である。しかし,こ の愛玩化とはどのような行動の変化であるのか,これまであまり明確にされてきていなかった。
国立遺伝学研究所は,米国の動物学者であるEdward O. Priceが,その著書の中で,「愛玩化とは動物個体が人を避ける傾向が弱くなるか,あるいは積極的に人に近づく傾向が強くなること」と述べていることに着目。この二つの性質を区別するための3種類の行動テストを考案し,野生由来の10系統と実験用の6系統および愛玩用の1系統について,この新規行動テストを行なった。
その結果,愛玩および実験用マウスは「愛玩化」の過程で,ヒトからの接触を避けないような行動特性が選抜されてきたものの,人に積極的に接近する性質については選択されてこなかったことが示された。この結果は,今後の研究において,野生マウスがどのような遺伝的変化に よって愛玩化されるか解明するための糸口になるものと期待される。
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