KDDI研究所と,古河電気工業は,大洋横断級光ファイバ伝送において世界最大となる140Tb/s(ハイビジョン映像2時間分を1秒で700本分転送可能な速度)の超大容量信号を約7300km(東京-ブリスベン(オーストラリア),ニューヨーク-ローマ間の距離に相当)伝送することに成功した。この実験により,伝送容量と伝送距離の積で示す伝送性能指数(容量距離積)において,世界で初めて1エクサ(Exa :1京の100倍,10の18乗)の壁を突破した。
従来の単一の光の通路(コア)を有する光ファイバの物理的な伝送容量の限界を超えるため,光ファイバ内に複数のコアを形成した「マルチコアファイバ」等を用いた空間多重光通信技術の研究が積極的に進められている。これまで従来の単一コアファイバの限界と言われている100Tb/sを超える大容量伝送実験が,マルチコアファイバを用いて実施されてきたが,伝送システムの性能指数である容量距離積は,毎秒0.7エクサビット・キロメータ程度までしか実現できていなかった。コア数を増大させるとコア間の信号の干渉が大きくなり長距離伝送が伸びず,逆にコア数を抑えると容量の拡大が難しくなるため,伝送容量と伝送距離の両立が課題だった。
KDDI研と古河電工は,コア間の信号の干渉を十分に抑えることで長距離中継伝送を可能とする7コア光ファイバと7コア光増幅器を共同開発した。さらに,最新の100Gb/s波長多重伝送システムで用いられている偏波多重四相位相変調信号(PDM-QPSK信号)の伝送効率をさらに高めるために,新たな信号処理技術を導入し,従来と比較して伝送効率を2倍に向上することに成功した。
これにより,ファイバ当りの伝送容量を140Tb/sへ拡大すると共に,伝送距離を7300kmまで延伸することが可能となり,世界初となる毎秒1エクサビット・キロメータの容量距離積を達成した。この成果は、商用化されている毎秒100ギガビット波長多重伝送システム(伝送容量約9Tb/s,伝送距離約1,500km)と比較すると,伝送容量は約15倍,容量距離積では約70倍向上した。
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