eコクピット(HUDなどのインタフェースを搭載した自動車運転席)世界市場は2020年に1,000万台超に

矢野経済研究所では,世界のeコクピット/車載HMI市場の調査を実施した。この調査におけるeコクピットとは車載カメラとの連携,危険警告,ヘッドアップディスプレイ(HUD)による緊急表示などを行う車載HMI(Human Machine Interface)システムを対象とする。

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将来的にはカーナビゲーションのような情報や音楽・映像配信などのインフォテインメント(情報・娯楽)機能のみならず,クルマそのものの基本機能(走る+曲がる+止まる+先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)とも連携し,運転者の状態を検知するとともに,運転者に警告・警報を行なうシステムになるものと期待されている。

2016年にeコクピットが欧州自動車メーカの純正品として製品化されることを想定し,2016年はメーカ出荷数量ベースで,115万4,000台,2020年には,1,000万台を超えるものと予測する。これは同年のカーナビとディスプレイオーディオ(DA)の合計の3,214万台の約1/3に達すると予測する。

既に一部の独自動車メーカは2013年からeコクピットのプロトタイプを発表してきているが,高級車搭載であることから,eコクピットの搭載は先進国の高級車からはじまり,その後,一部の小型車にも搭載されるものと考える。一方で大半の小型車や大衆車にはeコクピットではなく,おそらくスマートフォン連携の車載機などの低価格な製品が搭載されるものとみられる。

米国ではグーグルカーの例に見られるように,スマートフォンOSベンダによる自動車産業への参入が活発化している。スマートフォンOSベンダは最終的には自動運転車両用OSを立ち上げることを発表しており,その前段階としてeコクピットを開発するものとみられる。

また日本では自動車メーカやTier1といわれる一次部品メーカがeコクピットの製品化を進めるものと考える。日本の自動車関連企業はこれまで蓄積してきた車載カメラ,デジタル地図,カーナビゲーション等の情報系システムと,ADASを中心とする制御系の技術を融合させ,最終的には自動運転システムを視野に入れたeコクピットを製品化してくるものとみられる。

一方で課題もある。こうしたITを活用したプラットフォームやアプリケーションの開発を進めるためにはオープンなコミュニティの構築・運営が必要である。アップルのアップストア,グーグルのグーグルプレイのようなオープンなコミュニティであれば,全世界から多様で優れたアプリケーションが集まってくるため,世界的な標準プラットフォームになりやすい。

一般的に日本の自動車産業では有力なアプリケーションベンダと組んだオープンなコミュニティの構築・運営といった前例があまりないことから,今後のeコクピット製品化にむけてはこうした動きも期待される。

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