農工大ら,多収イネの光合成能力に貢献する遺伝子を特定

農業生物資源研究所(生物研)農業生物先端ゲノム研究センター イネゲノム育種研究ユニット長の山本敏央氏,農業・食品産業技術総合研究機構作物研究所 稲研究領域 主任研究員の高井俊之氏,東京農工大学大学院 農学研究院教授の平沢正氏らは共同で,日本でトップレベルの収量性を示すイネ品種「タカナリ」から葉の光合成速度を高める遺伝子を世界で初めて単離することに成功した。

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穀物の生産性を決定する主な遺伝子のうち,籾の数や穂の大きさなど,炭水化物を貯蔵する能力を決定する遺伝子は,近年次々と明らかになっている。しかし,光合成などの,炭水化物を作り出す能力を決定する遺伝子は,これまで殆ど見つかっておらず,食糧問題を解決する上でも,その発見が期待されていた。

研究グループは,「タカナリ」と日本の代表的品種「コシヒカリ」を交配した系統を使い,マップベースクローニング法により,光合成速度を高める遺伝子「GPS」を特定した。GPS遺伝子は,葉を細くする遺伝子として既に知られていたNAL1と呼ばれる遺伝子の変異型で,光合成が行われる場所である葉肉細胞の数を増やし,光合成速度を向上させることが明らかになった。

GPS遺伝子を上手く利用することで,多収品種を効率的に育成し,生産コストを低減できると期待される。また光合成の複雑な仕組みを明らかにするための基礎研究は今後ますます重要となるが,GPS遺伝子はこの実験素材としても有用と考えられる。

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