東北大学大学院環境科学研究科准教授の佐藤義倫氏は、北海道大学大学院歯学研究科、日立ハイテクノロジーズ、堀場製作所、産業技術総合研究所、ブルカー・ダルトニクス、ネッチ・ジャパンとの共同研究において、2年間にわたって、ラット胸部軟組織に埋入した絡み形状を持つ酸素含有官能基(ヒドロキシル基、カルボキシル基)修飾多層カーボンナノチューブ(tangled oxidized multi-walled carbon nanotubes: t-ox-MWCNTs)の構造を透過型電子顕微鏡、ラマン散乱分光法を用いて評価した。
その結果、埋入2年後、マクロファージ内のライソゾームにある一部のt-ox-MWCNTsではナノチューブの構造が分解されているが、細胞間隙(マクロファージ外)にあるt-ox-MWCNTsでは、1週、2年後とも、埋入前のナノチューブの構造とほぼ変化がなく、マクロファージに貪食されず、ナノチューブの構造が壊れないことを明らかにした。
生体外・生体内実験において、カルボキシル基修飾されている単層カーボンナノチューブや多層カーボンナノチューブがマクロファージや好中球などの貪食細胞中のライソゾーム内で生分解されることが知られていたが、軟組織のマクロファージ内外でのCNTの長期間構造安定性は調べられていなかった。
この研究成果によって、CNT生体材料は軟組織内で良好な生体適合性を持ち、CNTが分解せずに生体材料としての機能を保つことができるため、より軽量で強度のあるCNT生体材料の人工関節材や骨材への利用が期待される。
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