基礎生物学研究所の研究員の岡本暁氏、教授の松林嘉克氏、教授の川口正代司氏ら研究グループは、植物内にごく微量含まれるこのシグナル分子を捉え、その構造を解明することに世界で初めて成功した。この成果は、将来、空気中の窒素を栄養分として利用する能力をマメ科以外の植物にも付与するための基礎研究のひとつとして大きな前進である。
マメ科植物は、普通の植物が生育できないような養分の少ない土地でも生育できる。これはマメ科植物が、根粒というこぶ状の器官の中に、空気中の窒素を栄養分として利用する能力を持つ根粒菌という微生物を住まわせているため。
この仕組みをうまく維持するために、マメ科植物は環境に応じて根粒の数を調節しているが、研究グループは、様々な微量分析技術を駆使して、この遺伝子に由来するシグナル分子を検出し、その構造を明らかにすることに成功した。シグナル分子の実体は、アミノ酸が13個連なったペプチド(小さなタンパク質)で、アラビノースという糖鎖が付加されていた。
人工的に合成したシグナル分子を植物に与えると、根粒の数を減らす働きがあることが確かめられ、糖鎖が活性に不可欠であることも明らかになった。また、このシグナルは水や栄養の通り道である導管の中を移行し、HAR1という受容体に結合して情報を伝えていることも示した。
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