産業技術総合研究所は、インフルエンザウイルスA型、B型だけでなく、従来の簡易検査方法(イムノクロマトグラフィ)では判定不可能な亜型の識別も可能とする、小型高感度センサの開発に成功した。新しい検出原理による導波モードセンサを考案し、表面プラズモン共鳴法(SPR)に比べてその高感度性を実証。光センシング技術により、簡易検査方法に比べて短時間かつ1~2桁高い感度でのウイルス検出に成功した。また、センサ内のチップの変更等により、ウイルスだけでなく、カドミウムや鉛などの重金属、めっき液などの工業溶液のモニタリングも可能となる。
導波モードセンサは、検出チップ表面の状態変化を反射された光の角度や強度変化、波長変化といった光学特性でモニタするセンサ。導波モードセンサは、SPR法に比べてスペクトル幅が1/25程度狭いことがわかった。また、金ナノ粒子などの可視光領域に光吸収を持つ物質の吸着を鋭敏に捉えることができるという特性がある。
そこで、研究グループは、インフルエンザウイルスの表面を構成する主成分であり赤血球凝集素に対する抗体を金ナノ粒子で標識化し、ウイルス表面を金ナノ粒子で包み込んだ後に、導波モードセンサ検出面に付着させることによって、非常に高い感度での検出を実現した。また、金ナノ粒子標識した異なる種類のシアル酸を用いることによって、ヒトインフルエンザウイルスと鳥インフルエンザウイルスの簡易識別にも成功。
考案当初の導波モードセンサは1m×2mサイズの大型装置だったが、光学系等を工夫することにより、小型化にも成功。センサチップは信越化学工業製SOQを基板として用い、熱酸化法によって単結晶シリコン膜表層をシリカガラス膜にした。シリカガラス膜中で導波モードが励起される。
今後は、実環境におけるインフルエンザウイルスの検出と同定に適用するために、主要なインフルエンザウイルスの種類について実用検出感度を得るための改良を進めるほか、他のウイルス、微量不純物の検出などへの展開を図っていく。
詳しくはこちら。