東大ほか、10万年周期の氷期-間氷期サイクルのメカニズムを解明

東京大学大気海洋研究所准教授の阿部彩子氏は、海洋研究開発機構研究員の齋藤冬樹氏、国立極地研究所准教授の川村賢二氏、コロンビア大学教授のモーリーン=レイモ氏、スイス連邦工科大学ETH教授のハインツ=ブラッター氏らと共同して、10万年周期の氷期-間氷期サイクルのメカニズムを、本格的な気候・氷床モデリングにより解き明かした。

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地球の極域の気候と南極大陸やグリーンランドに見られる大陸氷河(氷床)の変化は、現在進行している地球温暖化の重要な指標であるとともに、海水準(静止 している海面)を直接変動させる要因にもなっている。

とりわけ、人類が進化してきたここ100万年間は、氷期と間氷期が交互に約10万年の周期で交代し、 氷床量の変動は、海水準変動(海面の高低変化)に換算して130mにも及ぶ。しかし、このような気候と氷床の大変動の周期と振幅をもたらすメ カニズムは謎であった。

研究グループは,最新の氷床—気候モデルを用いたシミュ レーションの結果、氷期-間氷期が10万年周期で交代する大きな気候変動は、日射変化に対して気候システムが応答し、大気−氷床−地殻の相互作用によりも たらされたものであると突き止めた。特に北米大陸の形状や気候の地理的分布が決め手となっており、北米の氷床には小さな日射量変化に対して大きく変 化しやすい条件が整っていることが分かった。また、大気中の二酸化炭素(CO2)は、氷期-間氷期サイクルに伴って変動し、その振幅を増幅させる働きがあるが、CO2が主体的に10万年周期を生み出しているわけではないことも分かった。

この研究成果は、地球温暖化に伴う氷床の長期予測や、より過去にさかのぼった気候変動史の解明にとっても重要なステップとなる。

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