理研、マウスの成熟脳で神経回路を制御する新たな仕組みを解明

理化学研究所は、神経回路が完成した成熟後のマウスの小脳で、神経細胞の一種であるプルキンエ細胞のイノシトール三リン酸(IP3)受容体が、樹状突起上にあるスパインの数を制御し、正常な神経回路を維持していることを明らかにした

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脳では、数千億個の神経細胞がシナプスを介して結合し、神経回路を形成している。シナプスは、神経細胞の樹状突起上にある無数のスパインと呼ばれる小さな突起に形成される。スパインは、生後の発達過程で活発に形成され、成熟後は安定な構造になることで機能的な神経回路を維持する。一方で、一部のスパインは成熟後も学習や記憶、環境などにより再編成されるため、成熟後の脳で神経細胞のスパインの形成が正しく制御されることは、学習や記憶、運動のコントロールなどの高次脳機能にとって非常に重要である。

研究グループは、小脳の主要な神経細胞であるプルキンエ細胞だけでIP3受容体を欠損させたマウスで、プルキンエ細胞のスパインが異常に増加し、形が長くなっていることを発見した。また、スパインの数の異常は、発達の過程ではなく成熟後に起こっていることが分かった。さらに、スパインの異常に伴い、このマウスは重度の小脳失調と運動学習の障害を起こした。

これらの発見は、成熟後の小脳では、IP3受容体がプルキンエ細胞のスパインの数を正しく制御することで機能的な神経回路を維持し、このメカニズムが小脳の機能である運動のコントロールと学習に重要であることを示している。

この成果は、統合失調症や自閉症、あるいは脊髄小脳変性症など多くの神経疾患の病態解明に役立つと期待できる。

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