京都大学理学研究科教授の阿形清和氏、徳島大学ソシオテクノサイエンス研究部学術研究員の梅園良彦氏(2013年3月まで理化学研究所)らのグループは、100年来の謎であった「プラナリアの再生の仕組み」をついに分子レベルで解明した。
さらには、プラナリアの再生原理を理解することによって、もともと再生できないプラナリア種の遺伝的原因を解明し、世界で初めて人為的に再生を誘導することにも成功した。
今回、本研究グループは100年来のモーガンの「何らかの『物質の濃度勾配』が体の前後の位置情報をコードしているのではないか」という仮説の大枠を分子レベルで実証したばかりでなく、再生できないプラナリアの遺伝的原因を初めて明らかにし、再生できない生き物でも、実は再生できる能力を十分にもっていることを初めて実験的に証明した。
プラナリアの一種であるナミウズムシ再生過程の詳細な解析をおこなった結果、ERK蛋白質とβ-カテニン蛋白質は体の前後軸に沿って相反する活性勾配を形成し、その結果、体の異なる領域(頭、首、腹と尾)が再生できると結論づけた。この仕組みにおいて、同研究グループが2002年に報告したnou-darake(ノウダラケ)遺伝子(この遺伝子をRNAiによって機能阻害すると、脳が頭部を超えて過形成する)も関与することがわかった。
これらの結果から、プラナリアの幹細胞はERK蛋白質の活性化によって、もともと頭部の細胞に分化するように指令されるが、nou-darake遺伝子やWnt/β-カテニン経路がERK蛋白質の活性化レベルを抑制することによって、その指令を首や腹や尾部の細胞へとそれぞれ運命転換させていると結論づけた。
プラナリア幹細胞において、どのようにしてERKシグナルが活性化しているのか、また、どのようにして、nou-darake遺伝子やWnt/β-カテニン経路がERKシグナルに対して抑制的に働いているのかを明らかにすることが今後の課題。
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