九大、金属材料の破壊を解析するための新しい4D評価技術を開発

九州大学大学院工学研究院教授の戸田裕之氏の研究グループは、世界最大の大型放射光施設SPring-8を活用した、新しい金属組織の4D観察法(3Dに時間軸を加えたもので、3Dでの連続観察)を開発した。

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金属の結晶粒界には、数~数十μm程度の粒子が多数存在する。研究グループは、SPring-8を利用したX線CTを用いれば、結晶粒界にある粒子が鮮明に3D観察できることに着目た。このような粒子は、金属が変形し、破壊していく過程でも常に結晶粒界に位置する為、結晶粒界の粒子の情報を使えば、個々の結晶の形を4Dで求めることができると発想した。

研究グループは2007年から予備的な実験を始め、2011年度には、この手法を実用的な構造材料に適用できるレベルにまで高精度化することに成功した。その後、この手法を主に航空機用に用いられるアルミニウムに適用し、その効果を検証した。研究グループは、この手法を「結晶粒界追跡法」と称している。

結晶粒界追跡法では、まず、SPring-8のX線CTを用いて金属が変形し、破壊する過程を観察する。そして、金属が壊れる寸前で変形を止め、金属の結晶粒界に、観察している金属とは異なる種類の金属をドーピングする。結晶粒界に異なる金属をドーピングすると、金属はすぐにぼろぼろに破壊してしまうが、金属の破壊寸前に、結晶粒界の3D画像を1枚取得することができまる。

これを頼りに、破壊直前の3D画像中に写っている数万個の粒子を結晶粒界の粒子とそれ以外に分け、結晶粒界の粒子を結べば、結晶粒の形状を知ることができる。そして、時間を遡ってすべての粒子の追跡をすれば、すべての結晶粒の形状の変化を時間を遡りながら4Dで観察することができる。

この手法を用いると、金属に力が加わって変形し、やがては破壊に至る過程を詳細に4D観察できる。これまでの材料の研究開発では、2Dの手法が用いられてきた。最近は、一部で3Dの手法も用いられつつありるが、実際の様々な現象は全て4Dであるため、4Dでの評価が可能になると、自動車や航空機などの輸送機器などに用いられる材料の研究開発が飛躍的に高度化すると期待される。

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