京都府大、標的たんぱく質に阻害薬を送り届けた後に立ち去る新規ドラッグデリバリー分子システムを開発

科学技術振興機構(JST)課題達成型基礎研究の一環として、京都府立医科大学教授の鈴木孝禎らは、新しい作用機序の抗がん剤候補分子を開発した。

子宮頚がん細胞や小児がんの1つである神経芽腫細胞では、ヒストン脱メチル化酵素(LSD1)が過剰発現して、がん細胞の増殖に関与することが知られている。しかし、LSD1の働きだけを阻害する抗がん剤はなかった。これは、LSD1に類似した構造を持つモノアミン酸化酵素(MAO)が存在するために、このMAOを阻害せずに、LSD1だけを特異的に阻害する分子の開発が困難であったため。

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鈴木教授らは、このトラニルシプロミンをLSD1だけに特異的に輸送して結合させる「たんぱく質を標的としたドラッグデリバリー型分子(DDM)」を作製。このトラニルシプロミンが連結したDDM(NCD33)は、LSD1だけに結合して、がん細胞の増殖を抑える効果があることを明らかにした。さらに、トラニルシプロミンよりも活性が300倍も高い新しい抗がん剤候補分子であることを確認した。

今回作製したNCD33分子を基に、今後副作用の少ない新たな抗がん剤の開発が期待される。

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