科学技術振興機構(JST)課題達成型基礎研究の一環として、大阪府立大学 21世紀科学研究機構テニュアトラック講師の髙橋 和氏、京都大学 工学研究科教授の野田進氏らは、実現が絶望視されてきた超小型のラマンシリコンレーザを開発した。
パソコンなどの心臓部分であるシリコンチップ(いわゆるCPU)では、電気配線を用いた情報伝達が省エネ・高速化の妨げとなっており、シリコンチップ内、またはチップ間で光によって情報伝達を行なう光配線の実現が求められている。理想は、安価なシリコン材料のみで光配線を行なうことだが、いくつか必要な技術の中で、最も難しいとされるのがシリコンからレーザ光を発生させることである。唯一の成功例が、ラマン効果という特殊な発光現象を用いた光励起型のレーザだが、エネルギー消費、素子サイズがともに大きく、実用化にはほど遠いものだった。
研究グループは、光を微小空間に強く閉じ込めるフォトニック結晶で作った超小型の光共鳴装置を用いて、従来の1万分の1以下のサイズと省エネルギーで動作するラマンシリコンレーザーを実現した。
成功のポイントは、これまで不用と思われていた共鳴状態からの発光と、応用には不適とされていた結晶方向を同時に利用すると逆にレーザ発振に有利になることを発見したこと。
今回のレーザは現段階では光励起型だが、大幅な省エネルギー化に成功したことから、将来的には用途の広い電流励起型のレーザへの発展が期待できる。実現すれば、シリコンチップの光配線は大きく進展して、電子技術と光技術が融合した理想のシリコンチップへの道が開かれる。また、安価な小型センサ光源として、さまざまな産業創出を可能とし、日本の半導体産業の競争力につながると期待される。
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