東北大学未来科学技術共同研究センター(大学院医学系研究科兼務)教授の後藤昌史氏、大学院医工学研究科准教授の村山和隆氏、大学院医学系研究科先進外科教授の大内憲明氏および医師の藤尾淳氏、大学院医学系研究科生物化学分野教授の五十嵐和彦氏らのグループは、糖尿病を対象とする細胞移植治療である膵島移植において、膵島細胞を分離するために使用されている細胞分離酵素においてコラゲナーゼH (天然型コラーゲンを分解する酵素コラゲナーゼのサブタイプ)が極めて重要であることを明らかにした。
膵島移植は、糖尿病患者にとって理想的な低侵襲治療法だったが、臓器提供者から提供された膵臓から膵島細胞を分離する技術は容易ではなく、世界のトップレベルの医療機関においても膵島分離成功率はいまだ50%に満たないのが現状。
コラゲナーゼサブタイプの組成を変動させ提供された膵臓の組織構成に至適化するためには、各コラゲナーゼサブタイプの作用対象となるターゲット基質の同定が不可欠だが、膵島分離におけるコラゲナーゼサブタイプの意義に関する統一見解は得られておらず、コラゲナーゼ H は過消化を惹起するため悪玉とする報告も見受けられたが、今回サブタイプ毎にクローニングした高純度なリコンビナントタイプのコラゲナーゼを用いる事により、コラゲナーゼ H が膵島分離において決定的役割を果たしている事を明らかにした。
さらに、質量分析法を導入する事により、膵組織上に発現しているコラーゲンIII がコラゲナーゼ H のターゲット基質の一つである事を見出した。今後、膵組織において発現されているコラーゲンⅢを半定量化し、それに対するColHの量を至適化することにより、膵島分離の成功率が飛躍的に高まる可能性があると推察される成果。
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