東大、発達期の小脳において、シナプス刈り込みに前初期遺伝子Arcが必要なことを発見

東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻神経生理学分野特任研究員の三國貴康氏と教授の狩野方伸氏らは、発達期の小脳において、シナプス刈り込みに前初期遺伝子Arcが必要なことを明らかにした。

統合失調症や自閉症の病態の根底には、神経回路の発達異常があると考えられている。 生後間もない脳には過剰な神経結合(シナプス)が存在するが、発達の過程で不要なシナプスは淘汰されて、機能的な神経回路が完成する。 この過程は「シナプス刈り込み」と呼ばれ、機能的な神経回路が出来上がるために不可欠とされているが、詳細な分子メカニズムは不明であった。

130621ut3

研究グループはまず、マウスの小脳のプルキンエ細胞の神経活動を上昇させると、登上線維シナプスの刈り込みが促進されることを示した。 そのうえで、プルキンエ細胞内へのカルシウム流入とそれに引き続くArc遺伝子の発現誘導がシナプス刈り込みを促進していることを明らかにした。 さらに、誘導されたArc分子が、プルキンエ細胞の細胞体にある過剰なシナプスを除去することにより、シナプス刈り込みを完成させることを明らかにした。

脆弱X症候群や結節系硬化症といった発達障害をきたす幾つかの症候群の疾患モデルマウスの脳では、Arcの発現異常があることが最近相次いで報告されている。 本研究の成果は、これらの精神疾患の病態を「シナプス刈り込み」の視点から解明するための新たなアプローチを提供するものである。

詳しくはこちら