東大,電子がガラス化する過程の観察に成功

最先端研究開発支援プログラム(FIRST)「強相関量子科学」の事業の一環として,東京大学大学院工学系研究科講師の賀川史敬氏,同大学院生 佐藤拓朗氏,同教授の十倉好紀氏らの研究グループは,三角格子を持つ層状有機化合物を急冷すると電子がガラス状態を形成することを発見した。

液体中の原子や分子は通常,低温にすると凍って周期性を持った結晶を組むが,中には急冷することによって周期性を持たないガラス状態へと凍結するものも数多く存在する。電子同士が強く相互作用し合う強相関電子系と呼ばれる物質群においては,いわば液体のように遍歴していた電子が,低温で結晶化して局在する現象がしばしば観測される。

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このような振る舞いは通常の液体の結晶化と一見似ているにもかかわらず,結晶化が急冷によって妨げられてガラス化するという現象は電子系においてこれまで知られていなかった。今回研究グループは,電気抵抗の揺らぎを10μ秒の分解能で測定すると共にX線回折実験を行なうことで,急冷下で電子が10~20㎚サイズのクラスターを形成しつつガラス化することを初めて見出した。

また,電子がガラス化する過程は,液体がガラス化する過程によく似ており,両者の間には普遍的なメカニズムが働いている可能性が示唆された。電子ガラスの研究を通じて,ガラス化メカニズムの普遍的な理解へ向けて大きく前進することが期待される。

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