京大ら,活性酸素の精子幹細胞に対する増殖促進作用を解明

京都大学医学研究科教授の篠原隆司氏,同研究員の森本裕子氏,京都府立医科大学教授の矢部千尋氏,理化学研究所バイオリソースセンター室長の小倉淳郎氏,近畿大学教授の森本剛氏らのグループの共同研究で,精子幹細胞の自己複製分裂に活性酸素が関与することを発見した。この結果は活性酸素の欠如が男性不妊症の原因になりうる可能性を示唆するとともに,不妊治療や細胞の保存技術等の技術開発に役立つと考えられるもの。

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活性酸素の低下は試験管内で培養された精子幹細胞の増殖を抑制するのみならず,適度な量の過酸化水素の添加は幹細胞の増殖を促進する作用をもち,過酸化酸素で長期間培養された幹細胞からは正常な産子を得ることができた。生体内においても活性酸素の低下は精原細胞の増殖低下をおこし,活性酸素の産生に寄与するNADPH oxidase1(NOX1)分子欠損マウスでは幹細胞の自己複製能力が著しく低下していることが分かった。

これまで活性酸素は精子の運動率や機能を低下させる作用があることが知られており,男性不妊症の原因の一つとして考えられていた。今回の研究成果は活性酸素の低下が精子を作るもととなる幹細胞の増殖を低下させる作用があるということを明らかにしたもの。このため,不妊男性の活性酸素を低下させると幹細胞の能力が低下し,必ずしも精子形成全体には良い影響があるとは言えないことを示唆する。その点で今回の成果は不妊患者への治療のあり方を幹細胞のレベルから新たに見直す必要があることを示唆するもの。

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