オランダ・ライデン大学の研究者を中心とする国際研究チームは,アルマ望遠鏡を使った観測で,若い星の周囲で星間微粒子が寄せ集められて大きく成長していく場所を発見した。このような星間微粒子が集まった領域がこれほど明瞭に観測されたのは,今回が初めて。この発見は,原始惑星系円盤に含まれる星間微粒子がどのように合体成長して彗星や惑星のような大きな天体ができたのか,という天文学の長年の謎に答えを与えるもの。
コンピュータによるシミュレーションによれば,星間微粒子は互いに衝突することで合体し,成長していくと示唆されている。しかし,ある程度大きくなった粒子が高速でぶつかり合うと,合体するどころかお互いを破壊してしまう。また衝突で壊れない場合でも,大きくなった粒子は原始惑星系円盤に多く含まれるガスとの摩擦によってエネルギーを失い,より大きく成長することなく中心の星に落ちて行ってしまうと考えられていた。
このため,星間微粒子が合体・成長を繰り返して惑星ができるためには,破壊や軌道変化を逃れることのできる「安全地帯」が必要になる。「ダストトラップ」と呼ばれる安全地帯の存在が提唱されてきたが,これまで実際には発見されていなかった。
オランダ・ライデン大学のニンケ・ファン・デル・マレル氏は,アルマ望遠鏡を用いてOph-IRS 48と呼ばれる星の周囲にある原始惑星系円盤を観測,理論的に予想されていた「ダストトラップ」を発見した。この星の周囲はドーナツ状のガスの環が取り囲んでいる。
このカシューナッツのような微粒子のあつまりの中で,微粒子は衝突と合体を繰り返して大きくなっていくと考えられる。ここは,ミリメートルサイズの微粒子が彗星のサイズにまで成長するのに適した環境を持っていおり,彗星のゆりかごといえるものだ。
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