筋肉の収縮リズムを決めている脳や脊髄からの神経シグナルは,「運動ニューロン」と呼ばれる神経細胞を介して筋肉に伝えられる。このため,運動ニューロンの多様性や,筋肉との接続様式を明らかにすることは,行動のメカニズムを理解するのに必要なだけでなく,運動ニューロンの変性によって神経シグナルが筋肉に伝達されなくなってしまう疾患(運動ニューロン病)の病理を解明する上でも重要となる。
国立遺伝学研究所は,運動ニューロンの多様性や,筋肉との接続様式を明らかにする為に,左右およそ60個ずつの運動ニューロンを含む節(脊髄節)が30個連なってカラム構造を形成しているゼブラフィッシュ幼魚に着目。身体の透明性を活かして,幼魚を生かしたまま単一の脊髄運動ニューロンや,カラム構造全体を可視化する遺伝学的技術を開発することで、脊髄運動ニューロンの細胞形態と、体幹筋との位置的な対応関係を詳細に明らかにした。
この研究によって,脊椎動物の脊髄運動ニューロンのカラム構造の微細構造が明らかになっただけでなく,将来,仮想行動中の運動ニューロン群の活動リズムをリアルタイムで観察することや,病態生理学的解析に適した運動ニューロン病のモデルを構築することが実現すると期待される。
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