放医研ら,PETを用い個別のがん治療効果を予測する方法を開発

がんにおいては,脂肪酸合成が活発化しており,脂肪酸合成酵素(FASN)の産生量が多いがんにおいて,悪性度が高いことが知られている。また,FASNの働きを抑えることでがんの増殖を抑制できることが報告されている。そのため,FASNの働きを抑える治療(FASN標的治療)は,まだ前臨床段階ながら,これまで根治の難しかったFASNを多量に産生する悪性度が高いがんに対する追加的な治療法として期待されている。

しかし,個々のがんにおいては,FASNの産生量が大きく異なることが知られており,FASN産生量の低いがんに本治療を施すと,効果が低くなってしまうだけでなく,患者に不必要な身体的・経済的負担を強いることになってしまう。そこで,無駄な患者負担を無くし,個々の患者に最適な治療法を提供するためにも,FASN標的治療に対する事前治療効果予測法の開発が望まれている。

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放射線医学総合研究所分子イメージング研究センター分子病態イメージング研究プログラム研究員の吉井幸恵氏は,酢酸PETを用いて個々のがんのFASNの働きを把握することで,FASN標的治療の開始前に効果を予測する方法を開発した。加えて,これまであまり分かっていなかったFASN標的治療の細胞影響についても,FASNを多量に産生するがんにおいてFASNの機能を低下させると,増殖や転移に関わる様々な重要な機能を低下させうることを発見した。

この成果から,PET画像診断により,がんに対するFASN標的治療の効果を予測することで,より効果的な治療戦略が提案できると期待される。この研究は,福井大,宮崎大,米国スローンケタリング記念がんセンターと共同で行なわれた。

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