奈良先端大,IGZO薄膜トランジスタの高信頼性化に成功

奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科 情報機能素子科学研究室教授の浦岡行治氏は,日新電機と共同でa-IGZOを使った薄膜トランジスタに用いるための高品質のゲート絶縁膜として,フッ素を含む窒化ゲート絶縁膜の開発に成功した。

高精細なディスプレイである有機ELを駆動するため,あるいは消費電力を下げるために,従来のシリコンから,酸化物半導体の一種であるアモルファス(非晶質)InGaZnO(IGZO)に注目が集まっている。

しかし,TFTは,IGZOの薄膜のほかに金属と絶縁膜の3つの膜の積層構造となっており,電子はIGZOと絶縁膜の界面を流れるため,IGZOを使ってTFTを作る際,スイッチの役目をするゲート絶縁膜については,通電時の電気的ストレスによる安定性に問題があり,絶縁膜の品質によって,絶縁膜に電子がトラップされてしまい,しきい値が変動して,電流が少なくなるなどの課題が残っていた。

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浦岡氏らはこの現象の改善にフッ素の効果があることを発見,フッ素を含む窒化ゲート絶縁膜の開発に成功した。さらに,フッ素の添加量を増やすことで,しきい値の変動が0.1V以下となり,従来の2.5Vに対し,ゲート絶縁膜に捕獲される電子の量を1桁以上低く抑えることができ,電気的安定性,すなわち信頼性が大きく向上することをつきとめた。この絶縁膜の形成は約150度ででき,柔軟なプラスチックの基板にも使える。

この薄膜は,水分などの浸入を防ぐ性質があるため薄膜トランジスタの最上層の保護膜としても有望で,きびしい信頼性が要求される有機ELを駆動するスイッチの絶縁膜としても期待が高まる。これにより,IGZOを使った有機ELの開発が加速される。

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