理化学研究所は、大腸菌が通常持っているタンパク質合成過程において、タンパク質合成終了の目印となる終止コドンを除いた環状のメッセンジャーRNA (mRNA)を鋳型に用いてエンドレスにタンパク質合成反応を起こすことに成功した。通常の直鎖状RNAを鋳型とするタンパク質合成反応に比べ、反応の効率は200倍に増大した。
大腸菌のタンパク質合成反応は、通常直鎖状のmRNAを鋳型として起きる。まず、リボソームがmRNAの先頭に結合し、開始コドンからタンパク質合成が始まり、終止コドンに到達してタンパク質合成が終わる。リボソームが終止コドンに達すると、リボソームはmRNAから離れ、次の新しい反応サイクルに向かうため同じあるいは別のmRNAの先頭に再び結合するが、このリボソームの解離から次の結合までのサイクルがタンパク質合成において最も時間のかかる過程である。
研究グループは、高効率に目的のタンパク質を合成する手法を開発するために、この最も時間のかかる過程に注目。もし、終止コドンを除いた環状mRNAで合成ができれば、リボソームがいったん結合するとエンドレスで合成可能になる。今回、実際に終止コドンを除いた環状mRNAを作製して、大腸菌がもつタンパク質合成過程を用いて評価しました。その結果、直鎖状mRNAと比較して、環状mRNAを用いたタンパク質合成反応は単位時間当たり200倍ほど高効率で進行することを確認した。
本手法は、長鎖タンパク質のコラーゲンやシルクなどを人工合成する手法として多様な応用が期待できる。
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