理化学研究所は、骨や関節、軟骨、靱帯、皮膚など広い範囲の組織で異常を引き起こす一連の遺伝性難治疾患の原因が、グリコサミノグリカン(GAG)という糖鎖の合成に重要な「B3GALT6遺伝子」であることを発見した。これは、理研統合生命医科学研究センター骨関節疾患研究チームチームリーダーの池川志郎氏、特別研究員の中島正宏氏、北海道大学大学院先端生命科学研究院教授の菅原一幸氏、博士研究員と水本秀二氏、横浜市立大学環境分子医科学准教授の三宅紀子氏、教授の松本直通氏らを中心とする共同研究グループと日本全国の臨床医の協力による成果。
細胞と細胞の間を埋める基質の主要な構成成分であるプロテオグリカン(PG)は、骨や軟骨、皮膚、血管など我々の体のあらゆる部分に存在し、組織の形成と維持、調節に重要な役割を担っている。PGはタンパク質(コアタンパク質)と数本~百本程度のグリコサミノグリカン(GAG)という糖鎖が結合領域を介してつながっており、この結合領域の合成に必要な酵素がB3GALT6タンパク質である。
共同研究グループは、脊柱の変形や関節の脱臼など、重度の骨格異常を起こす原因不明の遺伝性難治疾患「関節弛緩を伴う脊椎骨端骨幹端異形成症I型(SEMD-JL1)」の患者6家系の遺伝子を次世代シーケンサーで解析し、B3GALT6遺伝子の変異を発見、その酵素機能が喪失していることを見いだした。
共同研究グループはさらに、SEMD-JL1と似た骨格異常に加えて、皮膚の萎縮や過伸展、筋緊張低下がみられるため、従来は全く別の疾患として考えられていた先天性結合組織疾患の1つ「エーラス・ダンロス症候群早老性型」の患者にも、同様のB3GALT6遺伝子変異を発見した。
今回、B3GALT6遺伝子の機能障害でGAG結合領域が正常に合成できないと、骨、軟骨、靱帯、皮膚など多様な組織で異常を引き起こすことが分かった。これは、単なる難病の原因の1つを発見しただけでなく、「GAG結合領域病」という新たな疾患概念を提起するとともに、PGの代謝や機能におけるGAG結合領域の機構とその重要性を理解する上で大きな成果となる。
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