京都大学医学研究科准教授の椛島健治氏、教授の宮地良樹氏、日本学術振興会特別研究員の大塚篤司氏は、アトピー性皮膚炎の病態であるTh2型免疫反応に好塩基球が必須であることを発見した。
アトピー性皮膚炎の発症には、ダニなどのタンパク抗原により誘導されるものと金属やハプテン抗原により誘導される二つのタイプがあることが知られている。そのため、アトピー性皮膚炎を誘導する動物疾患モデルとして、タンパク抗原を繰り返し貼り付けする方法とハプテン抗原を反復塗布する疾患モデルの2種類が存在する。
まず好塩基球除去マウス用いてタンパク抗原によるアトピー性皮膚炎モデルを誘導したところ、野生型と好塩基球除去モデルマウスでは皮膚炎、または血清中の抗原特異的免疫グロブリンに大きな違いは見られなかった。
一方でハプテン反復塗布によるアトピー性皮膚炎モデルを誘導したところ、好塩基球除去マウスでは、皮膚炎と抗原特異的免疫グロブリンの減少が見られた。これらのことにより、ハプテン抗原にて誘導されるTh2型免疫応答では好塩基球が重要な役割を果たしていることが明らかになった。
これら抗原による違いが好塩基球のTh2型免疫応答への関与に違いをもたらす原因について、骨髄から誘導した好塩基球を用いて検証したところ、好塩基球のタンパク抗原取り込み能が充分でないことに起因していることがわかった。
これら結果を裏付けるように、タンパク抗原、ペプチド抗原をそれぞれ試験管内で好塩基球を用いてTh2型のT細胞を誘導させたところ、タンパク抗原ではTh2型T細胞がほとんど誘導されないのに対し、ペプチド抗原を用いた系ではTh2型T細胞が誘導された。さらに興味深いことに、タンパク抗原であっても樹状細胞存在下では好塩基球がTh2型免疫応答を誘導できることを明らかとした。
この結果、クロムやニッケルといった金属アレルギーを誘導する金属、うるしかぶれで知られるウルシオールや化粧品に含まれるラノリンや防腐剤のパラベンのようなハプテン、また、グルパール19Sなどのペプチド抗原に繰り返し曝露・感作される場合には、好塩基球が皮膚アレルギーの病態形成に関与している可能性が強く示唆されと共に、好塩基球をターゲットとした新たな治療戦略の開発が期待される。
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