帝人は,放射線(X線およびγ線)を遮蔽するアラミド繊維織物およびアラミドペーパーを開発した。5月上旬よりサンプル提供を開始し,放射線量の高い場所で使用される防護衣料やシート材などの用途を中心に市場開拓を進める。
放射線を遮蔽するためには,比較的安価で遮蔽能力に優れる鉛や,鉛を含む材料が多く使用されているが,環境への配慮から,その使用については世界的に規制の動きがある。こうした中,人体や環境への影響が比較的低いタングステンが,鉛の代替として放射線遮蔽用途に注目されている。
これまでタングステンを用いた放射線遮蔽素材として,繊維状やシート状の加工製品のほか,樹脂やゴムにタングステンを配合したハイブリッド素材などがあった。しかし,一般的に,タングステンのような高比重の金属を繊維に配合して製糸するのは難しいほか,繊維に高比重の金属を高濃度で配合すると,強度や弾性率などの繊維固有の機械的特性が損なわれることもあり,タングステンを含む繊維素材は実現が困難とされていた。
今回同社は,ポリマー技術と紡糸技術を駆使することで,アラミド繊維中にタングステンを練り込み,均一に配合することができた。また,パルプ形状の製品は,異形状の素材を保持する力に優れており,タングステン粒子との高い接着性を実現した。シート化技術を組み合わせることで,タングステンを均一に分散させたペーパーを生成することもできる。
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