理研,ヒト白血病細胞をほぼ死滅させることができる低分子化合物を同定

理化学研究所の免疫・アレルギー科学総合研究センターグループディレクターの石川文彦氏,同上級研究員の齊藤頼子氏,虎の門病院血液科らの研究グループは,従来の抗がん剤が効きにくい白血病幹細胞を含め,ヒト白血病細胞をほぼ死滅させることができる低分子化合物を同定した。

急性骨髄性白血病は予後不良な悪性の血液がんの1種で,抗がん剤により寛解に至っても,原因となる遺伝子異常によっては高い確率で再発し,死に至ることもある。

これまでに研究グループは,白血病再発の原因となる白血病幹細胞やそれが局在する場所を同定し,なぜ白血病幹細胞が抗がん剤に対して抵抗性を示すのかを明らかにするとともに,白血病幹細胞に発現する25種の分子標的を同定してきた。

研究グループは,この中でも多数の患者の白血病幹細胞に共通して発現するリン酸化酵素「HCK」に着目。HCKの酵素活性を最も強く阻害する低分子化合物「RK-20449」を選び,大型放射光施設“SPring-8”などでX線構造解析を行なったところ,HCKとRK-20449が強く結合していることを確認した。

次に,実際にRK-20449がヒトの白血病幹細胞を死滅させることができるかどうかを評価したところ,患者由来の白血病幹細胞を死滅させることができた。さらに,白血病ヒト化マウスでの有効性を評価したところ,特に,Flt3という遺伝子に異常を持ち,従来の抗がん剤に抵抗性を示す悪性度の高い急性骨髄性白血病症例に対して有効であり,RK-20449を毎日投与すると,2カ月後にはほぼ全ての白血病細胞が死滅ことを確認した。

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これは白血病の再発克服・根治を目指す新たな治療薬として期待できる成果。