理化学研究所は、生物がもともと備えているDNA修復機構で働くタンパク質を応用して、遺伝子診断やゲノム解析などに欠かせないポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の精度を向上させることに成功した。これは、理研放射光科学総合研究センター放射光システム生物学研究グループ客員研究員の福井健二氏(現 大阪大学産学連携本部)、チームリーダーの別所義隆氏、グループディレクターの倉光成紀氏らによる「高度好熱菌丸ごと一匹プロジェクト」で得た研究成果。
高度好熱菌丸ごと一匹プロジェクトの一環で、90℃を超える環境でも機能するさまざまなタンパク質の構造機能を解析し、中でも、DNAを修復するタンパク質は、DNAの傷害を極めて特異的に認識して結合することを明らかにしてきた。そこで、PCR の2つのエラーが生じる過程で「ミスマッチ塩基対」と呼ばれる DNA 傷害の一種が形成される点に着目し、このミスマッチ塩基対に強く結合する DNA 修復タンパク質「MutS」を利用しようと考えた。実際に細菌のDNA から、特定の遺伝子領域のDNAをPCRで増幅するときにMutSを加えると、添加量に応じて目的外のDNA増幅が抑制され、間違った配列への置換数も約3分の1に減少した。
この技術により、今後、幅広い分野の PCR 関連技術の効率と精度が改善されると期待できる。
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