国立遺伝学研究所小林研究室は、ローリングサークル(輪転がし)型DNA複製と呼ばれる、環状DNAを鋳型にした複製の連続反応によるものと考えられていた爆発的な遺伝子増幅について、その誘導にはRTT109というクロマチン構造の変化に関わる遺伝子が重要な役割をはたしていることを発見した。
RTT109遺伝子はヒストンをアセチル化修飾しクロマチン構造を変化させる働きがある。この遺伝子の発現が低下すると、リボソームRNA遺伝子が突如としてローリングサークル型DNA複製を開始し、コピー数が450コピー以上に増加した。その分子機構としては、RTT109がなくなるとDNAにできた傷を修復する過程に変化が生じ、本来起こらないローリングサークル型DNA複製中間体が形成され、輪っか状の鋳型がコロコロ転がりながら複製されてコピー数が増加する。
生物はこのヒストン修飾を利用した遺伝子増幅スイッチのON/OFFにより、時に遺伝子数を爆発的に増やして、環境変化への適応や発生、分化の制御を行っていると考えられる。
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