九大、ショウジョウバエの味と匂いの連合学習の解除シグナルは食物の浸透圧であることを発見

九州大学大学院理学研究院生物科学部門准教授の谷村禎一氏らは、マックスプランク神経生物学研究所(ドイツ)グループリーダーの谷本拓氏らとの国際共同研究によって、ショウジョウバエの匂いと報酬の連合記憶発現を制御する「満腹」のシグナルが、食物の味や栄養価に依存しないことを薬理・電気生理・行動実験を組み合わせることによって明らかにした。

多くの動物がそうであるように、ショウジョウバエの体液でも、主要なエネルギー源となる血糖はグルコースである。昆虫の場合、グルコースは二糖類であるトレハロースを分解して産生される。そこで、トレハロースを食べても体内で分解できないようにトレハロース分解酵素の阻害剤を混ぜて食べさせたが、記憶発現への抑制効果に変化はなかった。

アラビノースという糖は、ショウジョウバエにとって甘くはありますが栄養価は全くない。このアラビノースを与えても、同様に抑制効果に変化はなかった。

これらの結果は、食べるものの栄養価が抑制効果には重要でないことを意味しており、さらに食べた量とも関連性がないことがわかった。

糖に塩やカリウム、アミノ酸のグリシンを混ぜると味が変わり甘みは抑制されますが、意外なことに、これらの混合物にはすべて記憶発現の抑制効果があった。すなわち、甘さにも栄養価にも関係なく、食物の浸透圧が高いことが「満腹感」を抑制する有効なシグナルであることがわかった。

さらに、遺伝的技術を用いて、人間のグルカゴンに相当するハエのホルモンである AKH(Adipokinetic hormone:脂質動員ホルモン)を人工的に放出させ、ショウジョウバエの血中浸透圧を上昇させると、実際にはショウジョウバエは何も食べていないにもかかわらず、同様の「満腹感」の抑制効果が確認された。

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