産総研では高感度光検出器・撮影技術の開発を行なってきたが，その中で赤外線撮影から物体の色を再現できる画像処理技術の開発を進めており，これまでにモノクロでしか表示できなかった赤外線画像を可視光下で見た色に近いカラー画像として撮影できる赤外線カラー暗視カメラの原理を実証した。今回はこの技術をさらに高度化して，高精度なデジタル放送にも使える高解像度の赤外線カラー動画が撮影できるカメラを開発した。

　このカメラは，可視光照明下では通常のハイビジョンカラーカメラとして動作し，暗闇の中ではカメラ上部に取り付けられた赤外線投光器で赤外線を投射して赤外線映像を撮影し，カメラ内部の画像処理系によりカラー化する。これまでの赤外線カラー暗視画像の撮影速度は10フレーム/秒だったが，これを高速化させ，30フレーム/秒とした。また，撮像素子を画素数640×480から1920×1080にし，より高精細な映像を撮影できるようにした。今後開発した技術は民間企業に技術移転し，撮影装置の高性能化・高耐久性化させた後に実用化する予定としている。