日本電信電話(NTT)は,存在を意識させることなく周囲に馴染む電池として,光透過性を有する「透ける電池」を作製し,電池動作を確認した(ニュースリリース)。
あらゆるものがデバイス化し,ネットワークに接続されているIoTの普及が進んでいる。利便性が向上する一方で,世の中に様々なデバイスが溢れ,デバイスの存在感が増し煩わしさを感じる可能性も考えられる。そこでデバイスの存在感を抑えるために,これまでは「小型化」「軽量化」などの取り組みが進められている。
これまでの電池の研究開発は,EV,スマートフォン,ドローン等への適用を指向し,高出力で長持ちする電池を実現するために,より大きな容量,より長い寿命,より高い安全性をめざし設計されてきた。そのため従来電池の電極は,金属の集電層上に活物質,導電材,結着剤が混合された合材層が形成され,全体的に黒色で光を透過しない構造が一般的だった。
今回,同社は光透過性の観点で電池を構成する材料と構造に着目し,入射光の吸収と反射を抑制する技術開発を行ない,存在感なく周囲に馴染むデバイスをめざした。
開発した電池は,材料選定技術として,光の吸収を抑制しやすい材料を電池の電極として選択。構造制御技術として,光の吸収と反射を抑制しやすい構造になるように,電池の電極を作製。また,適用できる領域を拡げる事をめざし,電極を導電性フィルム上に成膜し,電解質をゲル化することで,「透ける」に加えて,「曲がる」電池を実現した。
同電池は一辺が9×5cmの長方形。動作確認として同電池を市販LEDに接続したところ,5分間の点灯を確認した。具体的な性能として,光透過特性を分光光度計により評価したところ,平均約25%の透過率を有していることを確認した。この透過率は,向こう側が透けて見える一般的なサングラスの透過率に相当するという。
また,同電池の充放電性能を評価したところ,平均電池電圧1.7V,放電容量0.03mAh(電流密度0.01mA/cm2)を示すことを確認した。この容量は,一般家庭にある掃き出し窓約1.5個分のサイズで市販のコイン電池CR1025の容量に相当する。さらに,充放電可能な二次電池として動作することも確認している。充放電を100回繰り返した後でもLED点灯が可能であることを確認した。
同社は同電池を,近年,研究開発が進んでいる透明に関する技術分野(情報表示端末分野のディスプレー,建物の窓等の建材分野の太陽光発電素子など)と組み合わせることで,IoTの新たな可能性拡大に繋がるとしている。